間違った知識から「保湿」を「手抜き」していませんか?

「しっとりとした潤い」は、美しいお肌の条件のひとつ。すなわち、スキンケアの基本中の基本は「保湿」です。しかし、保湿について間違った知識をもっている人が多いのも事実。そこで今回は、保湿に関する「2大誤解」について解説します。
私が解説します!
アオハルクリニック 小柳衣吏子院長
保湿の誤解1:汗は保湿剤の代わりになる。
梅雨入り後の汗ばむ時期なると、肌表面にある汗を保湿剤であるかのように誤解して、保湿を手抜きしがちになっていませんか?たしかに、汗は皮脂腺から分泌される皮脂とともに「皮脂膜」をつくります。しかし、汗だけによる保湿力はごく小さいもの。そもそも汗は、肌の表面の「汚れ」でもあり、アトピー性皮膚炎の悪化因子としても有名です。ほんのわずかな保湿力に期待して汗を放っておいては、肌荒れの原因になってしまいます。
ちなみに、お肌の保湿機構は以下の3つに分かれます。
①皮脂膜:皮膚の表面を覆う脂質。
②天然保湿因子(NMF):角質細胞の間にあるアミノ酸など。脂質ではありません。
③角質細胞間脂質:角質細胞の間にある脂質。
このうち、保湿の主役はなんといっても③「角質細胞間脂質」。保湿化粧品として開発されているものも、多くは③の脂質の成分なのです。このことからも、汗が保湿剤の代わりにならないことが分かってもらえるのではないでしょうか。
保湿の誤解 2:お肌を甘やかしてはいけない。
時々、「お肌を甘やかしてはいけない」という信念のもと、洗顔後も何もつけないなど超シンプルケアを貫いている方がおられます。「肌には皮脂という天然のクリームがある。余計な人工物を塗ると肌の機能がスポイルされ、皮脂が分泌されなくなる」と、信じている方も少なくありません。しかし、これらはいわば都市伝説のようなもの。少なくとも現時点の皮膚科学会では、そのような報告はありませんのでご注意を。
加齢とともに保湿力は下がっていく。
お肌に刺激を与えないことはよいことですが、現代社会でシンプルケアが過ぎると、お肌がカラカラになってしまいます。毎日メイクをして、オフィスビルやマンションのエアコンにさらされるのに、「まったく何もしない」のでは、肌にとってむしろ過酷といえるでしょう。事実としてはっきりしているのは、加齢によってお肌の皮脂分泌量が減っていくこと。下のグラフが示す通り、皮脂分泌量は年齢とともに減少していくため、若いうちは自力で保湿可能でシンプルケアで十分だったお肌でも、年齢を重ねていくうちに自力ではなんともならない肌に変化していきます。肌の老化を加速させないためにも、一年を通じてこまめなケアを心掛けてください。
参考書籍紹介
『美肌の王道』 (日経BP社・2016年12月刊)
美容皮膚科医として多くの女性の悩みを診てきた「アオハルクリニック」の院長・小柳衣吏子さんの著書。最新の知見ももとに洗顔、保湿といった基本的な美容習慣に潜む「間違い」を修正し、「ウェルエイジング」のための正しい方法を紹介。いつまでも前向きで、キレイでいたい人の必読書です。
著者紹介
アオハルクリニック院長
小柳衣吏子 (こやなぎ・えりこ)
アオハルクリニック院長。皮膚科専門医。順天堂大学医学部卒業後、都内の美容皮膚科で経験を積み、平成23年、アオハルクリニックの院長に就任、現在に至る。“ウェルエイジング”をスローガンに、多くの人にとって、よりよい治療を日々模索する美容皮膚科のスペシャリスト。
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