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ゼロから学ぶ更年期の基礎知識~第3弾~ ガマンしなくて大丈夫!更年期を乗り切るための治療と対策

ネガティブなイメージが先行して、不安に感じやすい更年期。正しく知ることで前向きに受け止め、健やかに乗り切るために、更年期医療の第一人者である後山尚久先生に基礎知識を教わる3回シリーズの最終回は、対策編です。身体や心に不調が出ても、「きっと更年期だから」と、ついガマンしがちですが、先延ばしにするうちに悪化したり、治りにくくなることもあるので放置は厳禁。今はさまざまな治療法や対処法があるので、自分に合った方法を選択しましょう。今回は気になるその治療と対策について、じっくり教えていただきます。

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後山尚久 先生

教えてくださったのは、

大阪医科薬科大学 健康科学クリニック 名誉所長
後山尚久 先生

大阪医科大学卒業。大阪医科大学産婦人科助教授、藍野学院短期大学教授、大阪医科大学健康科学クリニック教授などを経て、2020年より現職。漢方医学をベースに、女性のさまざまな悩みに応える。著書に『更年期 からだと心の変化で悩む人に』(NHK 出版)などがある。

ホルモン治療の効果は約3割!?

更年期=ホルモン治療と考える人は多いかもしれませんが、実はホルモン治療(ホルモン補充療法)で効果があるのは、「更年期障害」と診断されたうちの約3割程度です。更年期の症状がある人でも、女性ホルモンの量は十分足りていたり、その症状にホルモンが影響していない場合もあります。そのような場合は、ホルモン治療ではなく他の治療法を行います。
ホルモン治療が効果的だと分かった場合でも、すべての人がホルモン治療を受けるとは限りません。検査で女性ホルモン量が不足していることを確認し、「今の症状とホルモン状態から考えて、ホルモン治療が一番効果的だと思います」と丁寧に説明しても、悩む人が多いのです。日本では、まだホルモン治療に対して躊躇する人が多いようです。

※更年期の時期に気になる症状が出現するものを広い意味で「更年期障害」と呼びます。ただし、その中でも症状が重くなり、仕事や家事ができず、日常生活に支障をきたすほどひどくなった場合が治療対象となる「更年期障害」です。

無理なく続けられる治療法を見つけることが大切

最近のホルモン治療は、腕やお腹に塗って使うジェル状の塗り薬もありますが、貼り薬がメインです。塗るだけ、貼るだけでさまざまな症状によく効くのですが、薬の力で閉経前のホルモン周期のパターンや女性ホルモンの量に戻すものなので、いつまでもその状態を続けるのがいいわけではありません。女性ホルモンは女性の身体を守る機能があるので、続けていると調子がいいと言われる患者さんもいらっしゃいますが、いずれは本来の年齢の状態に戻さないといけないので、止め時が難しいのです。
そしてホルモン治療は、投与する期間に決まりはなく、医師によって意見も異なるうえ、治療の効果や感じ方も人それぞれ。更年期の治療法はホルモン治療だけではないので、無理なく続けやすい治療法を見つけることが大切です。

歴史が裏付ける漢方薬の更年期治療

漢方薬も更年期治療によく使われる治療法の一つです。驚くことに、平安時代の医者はすでに“女性の病気は男性よりも治しにくい”と知っていて、苦労しながら女性の身体に適した生薬の組み合わせを完成させ、上手に病気を治してきたようです。そんな歴史から、漢方薬には女性に効果的な処方が多く、今でも約95%もの産婦人科が漢方薬を治療に使っているのです。
更年期治療に漢方薬が適している一番の理由は、一つの薬でいくつもの症状を鎮められることです。漢方は症状だけで判断するのではなく、漢方独特の診察方法でその人の体質や体力なども含めて診断。今の症状を引き起こしている「原因=歪み」を探し、その歪みのタイプに合った漢方薬を処方します。私は更年期治療に桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)や加味逍遙散(かみしょうようさん)などをよく使いますが、どちらも女性の身体にできたいくつもの歪みを修正する働きを持つ生薬が複数入っているので、その多方向、多方面の働きによって、さまざまな症状が一気にすーっと治ることがよくあります。

また、身体に優しいのも漢方薬の特長。更年期の治療は長く続くことも多いので、身体に優しいほうが続けやすいですよね。本来漢方薬は、今ある症状をやわらげるだけでなく、予防に使うものでもあります。これから出そうな症状を出ないように身体を整えるので、飲み続けると、どんどん良い身体になっていくことも期待できます。症状のない時期の予防的な漢方薬の処方は自費診療にはなりますが、私の患者さんにも、漢方薬を予防的に使う人は少なくありません。「今気になる症状はないけれど、更年期をラクに済ませるために漢方薬を始めたい」と言われて、その人の歪みを補正する漢方薬を処方することもあります。中には、40歳代半ばからその薬を飲み続けていたら、知らない間に更年期が終わっていた、なんて人もおられます。

女性に合う薬が多いからこそ難しい漢方薬選び

漢方薬治療を始めるなら、病院で処方してもらうのが安心ですが、最近では薬局やドラッグストアなどでもたくさんの種類が並んでいるので、より手軽に買うことができます。
ただし、難しいのが自分に合った漢方薬の選び方。実は漢方の専門医でも、一度で最適な薬を見極めるのは難しく、微妙なズレが生じることも。専門医ですらそれほど難しいのですから、自分で選ぶ場合はなおさらですよね。だから、薬の添付文書に書かれている説明と自分の症状をじっくり照らし合わせ、これと思うものを2週間ほど試して、症状がラクになれば正解。変化がなければ合ってないと判断してはいかがでしょう。もちろん、体調がおかしいと感じたらすぐに止めてくださいね。

ホルモン変化に揺らがない身体を作るために

ここまで症状に悩まされた時の治療法についてご説明してきましたが、これから更年期を迎える人にとっては、どうすれば症状が出ないように予防できるかが気になるところではないでしょうか。ホルモンバランスの変化を防ぐことはできませんが、少しでも軽く済ませるために、今から気を付けていただきたいことはいくつかあります。

心・考え方

精神的なトラブルも多い更年期だから、心をラクにしておくことが何より重要。少しでもストレスの原因を減らすと同時に、小さなことが気になる人や完璧主義な人、がんばりすぎる人は、今より少しでも考え方を前向きに変えていけるといいですね。気になることがあっても一人で抱え込まないように、配偶者や家族、友人などと、何でも話せる仲のいい関係を築いておくことも大切です。「なるようになるさ」、「この苦しみ、辛さは永久に続かない」、「人生でうれしいこと、楽しいことは1%程度」などという考え方をしておくと、大きなストレスをすっとかわせるようになります。

生活・身体

生活の中で、特に注意していただきたいのは睡眠です。自律神経は寝て起きるとリセットされるので、しっかり睡眠をとらないと自律神経が乱れがちになります。最近の研究では7時間睡眠が理想とされていますので、それを目標に生活リズムを整えましょう。

また、冷えにも要注意。冷えは万病の元と言われますが、身体の冷えによって自律神経が乱れ、心に影響が現れる女性は少なくありません。もともと女性は冷えやすい人が多いので、衣服や生活環境を見直して手足が冷えないような工夫をしましょう。
食事は、閉経を過ぎると骨密度がガクンと下がるのでチーズやヨーグルトなど、栄養バランスに気をつけながらカルシウムの多い食材を積極的に取り入れましょう。
そのほか、自律神経を鍛えるために、ストレッチや適度な運動を習慣にするのもおすすめです。

最後に、これから更年期を迎える女性にひとこと

第1弾、第2弾でもご説明したように、閉経によって起こる女性ホルモン量の大きな変動は避けられず、現れる更年期のパターンもその年齢になってみないと分かりません。だからこそ、今から始めていただきたいのは、変化が訪れた時に自律神経が揺らがないように、あるいは、小さな揺らぎで済むように、心と身体を整えておくことです。まずは、気持ちをおおらかに持つ。そして、しっかり睡眠をとる。簡単なようで、意外と難しいことかもしれませんが、できる限りストレスフリーな心の状態を目指しましょう。それだけで、ホルモンの大きな変動が来た時の身体への影響が違ってくるはずです。
それでもつらく感じる時は、悪化させないように、ガマンしないで早めに対処することも大切です。病院を受診し、更年期医療の専門医に相談する、生活習慣を変える、漢方を試してみるなど、自分に合う治療と対策を見つけてくださいね。

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