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その不調、気象が原因!? Vol.2、冬に多くなる、気分の落ち込み

気温や気圧、湿度など気象の変化によって、さまざまな不調が現れる“気象病”。
身体の機能をコントロールしている自律神経が、気象全般の変化に敏感に反応して鋭敏に動いてしまうことで起こります。
季節や、その人の“感じ方”によっても現れる不調は異なりますが、冬に多くなると言われているのが、“気分の落ち込み”。
ロート製薬が行ったアンケートでも、お悩みの声が多く寄せられました。
なぜ、気分の落ち込みが起こるのか、予防方法はあるのか、気象病に詳しい先生に漢方医学の視点から解説していただきます。

後山尚久先生

私が解説します!

大阪医科薬科大学 健康科学クリニック 名誉所長
後山尚久 先生

大阪医科大学卒業。大阪医科大学産婦人科助教授、藍野学院短期大学教授、大阪医科大学健康科学クリニック教授などを経て、2020年より現職。漢方医学をベースに、女性のさまざまな悩みに応える。著書に『更年期 からだと心の変化で悩む人に』(NHK 出版)などがある

うつ病とは異なるが、“楽しくない日々”が続く

どんよりとした灰色の空、冷たい雨……。心まで寒くなってしまうような天気が多くなる冬。太陽が明るく輝く季節とは違って、冬場は気象による気分の落ち込みを感じる人が多くなります。日が落ちて暗くなるだけで、心が落ち込むという声もよく聞きます。
気象病とは異なるものですが、【冬季うつ】などと呼ばれる、季節性感情障害という病気があります。日照時間が関係していると言われていて、日没が早くなる秋から冬に多く見られ、春にはよくなるというものです。冬の日照時間が極端に短い、ノルウェーなど北欧の国では広く知られていますし、晴れる日が少ないイギリスでは、国民の10%が発症するとの報告もあるほどです。
気象によって起こる気分の落ち込みは、うつ病ほど重いものではなく、日常生活に支障をきたすほどではありません。気力が低下したり、気分が乗らないなど「楽しくない」と感じながら日々を過ごしている人が多いようです。本人にとってはツライものだと思いますが、冬場に気分が変化することは、決して珍しくないのです。

気分の落ち込みはなぜ起こる?

よく「病は気から」と言いますね。これは、気の持ちようで、病気が良くも悪くもなる、という意味のことわざです。あまり知られていませんが、ここで使われている“気”とは、漢方医学の考えから引用されたもの。身体を支える3つの柱【気(き)・血(けつ)・水(すい)】の【気】のことです。

【気】とは、心身の元気の源となるエネルギーのようなもので、これがしっかりとり入れられ、身体のすみずみまで巡っているのが健康な状態です。
気象による気分の落ち込みは、エネルギーともいえる【気】が不足したり、滞ったりすることで起こるのです。
感情が揺れ動くことに「こんなことではよくない」と感じたり、やることがあっても思うようにできず「怠けものだと思われそう」などと悩むうちに、ますます気が滅入るということもあります。
まさに「病は気から」。自分の変化を心配し過ぎることも、気分の落ち込みの原因になってしまいます。

気分の落ち込みには、どう対処する?

気分の落ち込みは、意外にも身体の不調が原因になっていることもあります。例えば、身体の冷え。気温の低さから身体が冷え、自律神経が乱れて心にも影響している女性は少なくありません。冷えは万病のもとですからね。
私のところへ来られる患者さんには、気温が下がり始める10月頃から身体を温めることをお勧めしています。特に足元です。毎年冬になると気分が落ち込むという人は、ホットカーペットを利用するなど、足元を温めることを試してください。

もし、いつもと様子が違うと感じたら漢方外来を受診するのもひとつの方法です。
漢方医学は、身体と心は区別できないひとつのものという考えのもとで治療していきます。例えば腹痛で受診した患者さんは、お腹の状態だけでなく、心の状態も診ます。どこに原因があるのかを見つけるために、患者さんとの対話をとても大切にしているのです。心療内科へ行くほどではないけれど、ちょっとおかしいなと感じている場合、自分の状態を医師に伝えることで心が軽くなるかもしれません。近くに漢方外来がない場合は、かかりつけの先生に相談するのもいいでしょう。
漢方薬なら、【気】の巡りをよくし、【気】をとり入れやすくするものを服用するとよいでしょう。効果が期待できるものとして【補中益気湯/ほちゅうえっきとう】、【柴朴湯/さいぼくとう】、【半夏厚朴湯/はんげこうぼくとう】、【女神散/にょしんさん】などがあります。

落ち込みの予防には心が喜ぶことを!

気分の落ち込みが現れたときには、自分がイヤだと感じるものから離れることです。苦手な人に会わない。気が進まない場所へ行かないようにする。ただ、そうしたくてもできない、という状況ももちろんあるでしょう。そういうときのためにも、日頃から自分が気持ちがよいと感じること、ココロが喜ぶことをしましょう。【気】の巡りをよくして、エネルギーをしっかりとり込むのです。

海を眺めたり、森林浴をしたりもいいでしょう。海や森は、きっといい【気】が流れている場所だと思います。もちろん、カラオケで思い切り歌ったり、温泉でゆっくりするのもいいでしょう。どんなことでもいいのです。自分の好きなことをする機会を増やしましょう。そしてこんな時こそ好きな人、気の合う人の輪の中にいてください。

そして、やはり自律神経を整えること。気象変化による不快な症状が現れないようにするには、きちんと食事を摂ること、質のよい睡眠をとることも大切です。適度な運動も継続して行いましょう。

【気】を巡らせて弱った体を強くする

・「補中益気湯」について詳しく知りたい方はこちら

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