喫煙率0.1%を達成!ロート製薬が全社で挑んだ禁煙への取り組み

ロート製薬は薬を作る会社ですが、「薬に頼らない製薬会社になりたい」と考えています。もちろん薬は大切ですが、本当の健康は薬が必要でない身体を作ることだと思うからです。そのために目標としているのが“健康寿命を延ばす”ということ。今でこそ“健康経営”という言葉が社会に浸透してきましたが、「皆様に健康をお届けするには、まず社員が健康であってこそ」と考えるロート製薬は、50年も前から社員の健康対策に取り組んできました。1970年頃に始めたラジオ体操や全社員の体力測定、社員の健康増進を専任に行う部署の設置など、数々の取り組みを進める中、先日ついに成し遂げた『禁煙プロジェクト』についてご紹介します。

語ってくれたのは
健康経営担当 ロートネーム:じゅんちゃん
「会社のためでなく、社員の幸せのために」、禁煙への舵を切ったのは会社から
今ではオフィスとタバコは無縁のように思えますが、ひと昔前は、職場ではもうもうと煙が立ち込めている光景も珍しくありませんでした。ロート製薬が分煙を始めたのはそんな風潮があった1996年のこと。タバコがかっこいいという人や、禁煙を他人事のように考える人が多かった時代に、社員の健康のための第一歩を踏み出したのです。ただし、この時点では規則的に禁止とはせず、あくまでも社員のWell being(幸せ)のために、健康の大切さを訴えることで禁煙を意識するきっかけを作るにとどまりました。

有志が立ち上がり、プロジェクトがスタート
そうして分煙から10年近くが経った2005年、一部の有志の間で新たな取り組みが生まれました。
ロート製薬には、会社の未来を創るために、社員自らが提案して考える「ARK(明日のロートを考える)」というプロジェクトがあります。その中の1つのチームが “卒煙”を応援する取り組みを始めたのです。8人のメンバーは職種も年齢も様々で、タバコを吸う人・吸わない人・止めた人もいましたが、感じていた使命は同じ。「1人でも多くの仲間がタバコから卒業できるように、やめたい人の卒煙を支援すること」、そして「やめたい意識を高めるために、卒煙の素晴らしさを伝えること」。無理矢理やめさせるのではなく、自ら禁煙を決意してほしいと考えて、環境作り・身体的支援・意識支援の3方向からアプローチを始めたのです。
健康被害を知って自ら止めたくなるように
意識支援としてまず喫煙者に伝えたのが、タバコの健康被害。タバコは有害物質と発がん物質が含まれており、がんリスクだけでなく、寿命が短くなる大きな原因だとされています。ところが、喫煙が習慣になっているとタバコの怖さに気づかなかったり、忘れていたりするため、改めてタバコの健康被害を周知徹底する必要性を感じたのです。

吸わない人も巻き込んで卒煙を応援!
健康に悪影響が大きいタバコですが、プロジェクトが発足した2005年当時、社内の喫煙率はまだ20%以上も。“タバコは大人のたしなみ”という考えも珍しくなく、喫煙者の反発が気になってなかなか動き出せずにいました。
ところが、対面で聞き取り調査を進めると、喫煙している人の約8割が「タバコを止めたい」と考えていることが判明!「身体に悪いのはわかっているけれど、止めるきっかけが見つからない」、「何度も止めようとしたけれど禁煙が続かない」という声が多く聞かれたのです。この結果に勇気づけられ、喫煙者が禁煙のスイッチを入れるきっかけを作ろうと、活動をスタートさせました。
<実行した活動の一部をご紹介>
2005年
●マナーの意識づけのために、会社周辺のゴミ(吸い殻)拾いを実施
2006年
●身体的支援として、ニコチンパッチを無料で配布
●タバコのことを考えるきっかけとして、全社員対象に卒煙の標語を募集
●卒煙者へのインタビュー記事を社内掲示板に投稿
●環境作りとして、全社で「禁煙デー」を実施
最初は月1回、次第に週1回へと間隔を狭め、2007年には全社終日禁煙に!
2020年までに全社員の喫煙習慣からの離脱を目指すことを宣言
こうした地道な活動によって喫煙者は順調に減っていきました。ところが活動開始から10年以上を経て、喫煙率がある程度減ると減少のスピードは鈍化。なかなかそこから先に進めずにいました。
そんな状況の中、2018年、健康経営を目指すロート製薬として、社会に先駆けてより積極的に卒煙を進めようと、「全社員の非喫煙を目指す」と発表がありました。それを機に「全社卒煙プロジェクト」が新たに発足し、卒煙を応援する取り組みは一気に加速。さらに2019年には、喫煙による健康被害のない社会を目指す企業・団体が連携する「禁煙推進企業コンソーシアム」に参加することで、「ロート製薬は2020年までに喫煙率ゼロを目指す」と社会に宣言することとなり、より決意が高まったのです。
決意を促すために、地道に、根気強く
みんなで楽しみながら卒煙できるようにと、今までよりも積極的にイベントを企画しました。
2018年
●全社員にタバコアンケートを実施
禁煙者だけでなく、タバコを吸わない人が禁煙を他人事と思わないように全社をあげての意識改革に努めました。
●“卒煙ダービー”を開催
喫煙率の高い工場では、卒煙に挑戦する人を競馬の出走者に例え、非喫煙者の工場全員が出走者を1人選びフォローする“卒煙ダービー”を喫煙者自らが企画しました。昼休みなどの禁煙中のイライラを、フォロワーが肩をもんだり飴やガムをあげたりと気分転換を促し、3か月後には全出走者が無事にゴールして目標を達成!
出走者とフォロワー両者にご褒美がありました。第1回目の“卒煙ダービー”は工場の管理職が卒煙に挑戦しましたが、そのがんばりを見たメンバーが次は自分がと自らエントリーをしてくれて第2回、第3回と続き、最終的には工場全員が卒煙に成功致しました。
●「遠隔禁煙外来」を全額会社負担で実施
●ノースモーキング手当および卒煙手当の支給
健康診断のオプションなどに使えるロート独自の健康通貨「ARUCO(アルコ)」を、非喫煙者には毎月500コイン、卒煙成功者にはボーナスとして10,000コインを支給しました。
2019年
●「禁煙推進企業コンソーシアム」参加
このように様々なイベントを進めても、全ての喫煙者がすぐに決意できた訳ではありません。なかなか卒煙に挑めない人もいましたが、諦めずに個別にヒアリングを重ね、意識を変えるよう促し続ける中で、次第に多くの人が卒煙を決意するきっかけを見つけていきました。
元号が令和に変わったこと、子どもや恋人ができたこと、美容に目覚めたこと、子どもに「パパがタバコを吸って死んじゃうんじゃないか心配」と泣かれて決心した人もいました。
そんな人たちは、卒煙を決心するまで長く葛藤したものの、いざ始めると「なんだ、こんなものか」、「意外と苦しくなかった」と感じたのだとか。“吸いたくなったら筋トレ”で乗り切るうちに体型が変わった、肌がキレイになったと、一石二鳥の効果を喜ぶ人が多く、食事がおいしくなったという人も見かけられました。

また、せっかく決意しても、どうしても止められない人がいるのも依存性が強いタバコの現実。そんな人には、喫煙の害を伝えるだけでなく「オンライン禁煙外来」を会社負担で勧めたり、禁煙パッチを支給したりと、身体的支援をプラスしながら応援を続けました。簡単ではありませんが、根気強く支援することで信頼関係が生まれ、努力を重ねて、卒煙を達成する人が増えています。はじめは意欲的ではなかった人も、「常に自分の体調を気にして連絡してくれるのがうれしくて、励みになった」と、今では自ら定期的に状況を報告してくれるんです。

ついに社員の99.9%が非喫煙者に!
「喫煙者を悪者にしないように、非喫煙者が無関心にならないように」。
この言葉を意識しながら全社を挙げて卒煙を応援し続けた結果、ついに2020年4月に喫煙率0.1%を達成!
日本全体の喫煙率が17.8%※という中、果てしなく思えた「喫煙率ゼロ」という高い目標を達成できたのは、ロート製薬のスローガン「NEVER SAY NEVER」(=どんな困難にもめげず、常識の枠を超えてチャレンジし続けること)の決意があったからこそ。全社員の努力によって達成したこの成果はロート製薬の誇りです。
でも、これで終わりとは考えていません。卒煙しても毎月の状況確認を継続し、気持ちが揺らぐ時にはカウンセリングや禁煙外来など、状態に合った対応策で応援。再び喫煙することがないように見守り、サポートを続けます。この禁煙プロジェクトの目標達成をステップとして、ロート製薬はこれからも社員の健康支援を続けていきます。
※厚生労働省国民健康栄養調査(2020年1月15日更新)
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