「なんとなくだるい」、「すぐ疲れる」。それ、隠れ貧血が原因かも?!

「なんとなくしんどい」、「すぐ疲れる」など、病気でもないのに体調が優れないという不定愁訴(ふていしゅうそ)。女性に多いこの不調は、自律神経の乱れに原因があると言われますが、最近では貧血(鉄不足)も注目されています。
2015年の厚生労働省の調査※1では、日本人女性の10人に1人、月経のある50歳未満では5人に1人が貧血だと言われています。よくあることと軽く考えられがちですが、貧血は体調に関係する大きなトラブル。その重大さをお伝えするために、内科医の山本佳奈先生にお話を伺いました。日頃から頭痛やだるさにお悩みの方は必見です!
※1 「平成27年国民健康・栄養調査」より
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。
ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)
軽く考えていると危険?!貧血は全身に影響を与える大問題
漠然といくつもの症状があり、検査しても原因がわからない不定愁訴。その症状の一部は貧血=鉄不足が原因だと言われています。
Q. 不定愁訴の中でも、貧血が原因と言われている症状は何ですか?
頭痛、肩こり、倦怠感、めまい、疲れやすいといった症状のほか、わけもなくイライラしたり、集中できない悩みなどは、貧血が原因の可能性があります。一方、ふらつきや食欲不振、過呼吸、頻尿を起こす過活動膀胱などは、自律神経の乱れが考えられます。
Q. どうして貧血だと、そのような症状が起こるのですか?
私たちが呼吸から取り入れる酸素は、血液中のヘモグロビンに含まれる鉄によって全身に運ばれます。その鉄が不足すると、十分な酸素が届けられず、体の中は酸欠状態に。そうして脳が酸素不足になると頭痛やめまいを、骨格筋が酸素不足になると倦怠感を生じるのです。貧血の人に起こりやすい動悸や息切れは、足りない酸素を補うために、身体が呼吸数や心拍数を増やそうとするからなんです。
Q. 普段の生活で、なぜ鉄不足になるのですか?
毎月生理による出血で鉄が失われるので、女性はもともと貧血になりがち。それなのにダイエットや偏食で野菜ばかり食べ、赤身の肉や魚が不足するような食生活だと、ますます鉄不足に陥ります。
健康のために取り組むジョギングなどのスポーツも、頑張りすぎると貧血の原因になるんですよ。実は鉄は、生理時の血液だけでなく、汗や尿、便などからも体外へ排出されているのですが、激しい運動をすると、大量の汗と一緒に鉄が排出されるうえ、筋肉を作るために鉄が使われたり、足裏にかかる衝撃で赤血球が壊れたりして、より多くの鉄が失われてしまうのです。

貧血の予備軍である“隠れ貧血”は女性の大敵。今すぐ対策を!
残念なことですが、日本は「貧血大国」と呼ばれるほど鉄不足が深刻。働く女性を対象とした調査※2では、ミネラル類の中で最も摂取量が不足している栄養素が鉄であり、1日の摂取量は、必要量の10%にも満たないそうです。
※2 まるのうち保健室 2015 20-30代の女性就業者 N=212、「働き女子 栄養素の摂取状況」「Will Conscious Marunouchi「まるのうち保健室」調査」Copyright© 2015 三菱地所株式会社・一般社団法人ラブテリAll Rights Reserved.
Q. 健康診断で「貧血」と指摘されていなければ大丈夫ですよね?
いいえ!実は、女性の多くは“隠れ貧血”の可能性が高いんです。
一般的に貧血は、鉄を含む血液中のヘモグロビンの量(濃度)によって診断されます。ただし、鉄は血液中にだけ存在しているわけではなく、血液中にあるのは身体全体の鉄の60~70%。残りの30~40%はフェリチンというたんぱく質と結合し、肝臓や脾臓などに蓄えられています。身体中に酸素を運ぶ大切な役割を担っているので、不足しないように備蓄されているのです。この備蓄がないと、なんとか日常は乗り切れても、生理や妊娠・出産などで多くの鉄が必要な時にはすぐに鉄分不足=貧血になってしまいます。20~40代女性の40%以上とも言われる“隠れ貧血”は、鉄の備蓄がない貧血寸前の状態。たとえ今は貧血でなくても、決して油断はできません。

Q. 誰でも判断しやすいような、鉄不足のサインってありますか?
貧血と診断されなくても、不定愁訴を感じるなら要注意。次に挙げる項目をチェックしてみてください。
- □疲れやすい
- □氷をばくばく食べてしまう
- □顔色が悪いと言われる
- □食生活が偏っている
- □食事制限をしている
- □生理の出血量が多い
- □爪が薄くて弱い
- □息切れしやすい
(山本医師作成)
1つでも当てはまれば鉄不足の疑い有りです。病院で、「隠れ貧血が心配なので、フェリチンも測りたい」と相談してみてください。
Q. 普段の食事で鉄不足を防げますか?
生理でなくても汗や尿・便で毎日約1mgの鉄が失われていて、吸収率を考えると、その1mgを補うには約20mgもの鉄を取り入れる必要があると考えられています。常に意識しないと、食事で十分な量は補えません。
レバーは日々の食事に取り入れるのは難しく、野菜や豆類など植物性の鉄は動物性より吸収率が低いので、赤身の魚や肉を積極的に摂るといいですね。よく噛むと胃酸の分泌が活発になるので、吸収率が高まりますよ。
吸収率を上げるには、ビタミンCと一緒に摂るのがオススメ。鉄製の鍋やフライパンを使うと、調理の際に鉄が溶け出し、食事と一緒に摂取できると言われています。
逆に、カルシウムや、食品添加物の乳化剤や安定剤、防腐剤に使われるリン酸塩は吸収を阻害しやすいので、注意してくださいね。
Q. 鉄を摂りすぎる心配はありますか?
医療機関で処方された鉄剤を内服したとしても、鉄過剰になることはまずありません。鉄剤を注射する場合は、鉄過剰にならないように、あらかじめ注射の回数を決めたり、採血で数値を確認しながら慎重に投与されるので大丈夫です。
貧血の治療をしていると、「鉄を補って、今までだるかったんだと初めてわかった」、というお声をよく聞きます。貧血が治るにつれて、当たり前だと思っていた不調が楽になる方も多いので、不定愁訴にお悩みの方は鉄不足を疑ってみてください。

ロート製薬が取り組む、社員の健康のための“鉄活”
隠れ貧血が多い現代社会の女性にとって、鉄分は重要な栄養素。ロート製薬でも社員の健康のための取り組みとして、2018年、女性社員による改善プログラム「体質改善280Day’sチャレンジ」=「ロート流“鉄活”」を実施しました。
1日の不足分の鉄を含有したゼリー1粒を、28日間毎日摂取しながら、不定愁訴や体質改善を考えた習慣を行い、ヘモグロビン推定値とともに「習慣記録手帳」に記録。日々の健康状態を可視化しました。この「毎日手軽に鉄を摂取すること」、「毎日自分の状態を可視化すること」がロート製薬が考える“鉄活”です。

プログラム終了時には、参加者の半数が、「不定愁訴の頻度が減った」、「何らかの体質体調の改善を感じた」と回答。疲労感や倦怠感の改善を実感したという声が多く聞かれました。
この結果を受けて、ロート製薬ではさらに取り組みを進め、2018年の健康診断より、隠れ貧血の指標、フェリチン値の測定を無償化しました。現在も、鉄含有ゼリーをおやつ代わりに配布して、社員の鉄活を推進しています。
皆さんもぜひ“鉄活”を意識して、生活に取り入れてみてくださいね。