早めの対策が吉!老眼とうまく付き合う5つの習慣

誰もが加齢によって手に入れることになってしまう老眼。できることなら治したい、老眼鏡はかけたくない、何とかして予防したい……。そんなことは可能なのでしょうか?スマホ時代の「いい目」について新定義とともに解説します。
1983年、福島県立医科大学卒業後、カリフォルニア大学バークレー校研究員などを経て、2003年、梶田眼科開業。東京医科歯科大学医学部臨床教授、日本眼光学学会理事、日本コンタクトレンズ学会常任理事、日本眼鏡学会評議員などを務める。
「視力がいい」は自慢にならない?理想は「近くが快適に見える目」
みなさんは、「いい目」=「視力がいい」と思っていませんか?
私は、若いうちは15cm~20cmくらいの距離で、裸眼で本が読めるくらいの近視がうらやましいくらいの「いい目」だと思っています。
近視ですので、遠くを見るには眼鏡やコンタクトレンズを使う必要があり、一般的には「視力が悪い人」になるわけですが、長い人生のことを考えると、一生裸眼で本が読める可能性が高いわけです。
逆に、いわゆる「視力のいい人」は、どうでしょうか。ヒトの目は年齢とともに遠視(遠くも近くも見えにくくなる)に移行していくので、40歳~50歳くらいで遠視が強くなって、眼鏡やコンタクトレンズを使わないと本が読めなくなってしまうのです。
昔は、現在ほど手元を見ることがそんなになかったので、近視=悪いというイメージでしたが、いまは近くを見ることがすごく増えたでしょう?スマホだと15cmくらいまで近づいて細かい字を読むことがとても多いですよね。いまの時代、遠くにはそんなに情報はありません。情報はスマホに集まってくるので、「15~20cmの距離が快適に見える目」が大事なんです。
1日中パソコンの画面を見ている人が1.0以上の視力に矯正する必要はあるでしょうか。車の運転でも、0.7あれば免許は取れます。遠くが見える目が優秀、という世間一般のイメージをそろそろ変えるときかもしれませんね。
「いい目」をもっている人はぜひ大事にしてほしい。40歳以降に近視の良さがきっと分かりますよ。

老眼とうまく付き合う5つの習慣
加齢による老眼を予防することは残念ながらできません。
「老眼」という名称が生まれたころは、30歳過ぎで「老眼です」と言われても、文句を言う人はいませんでした。ところが近年は、平均寿命も健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)もすごくのびて、「老」のイメージが当時よりもずっと高齢になってしまったので、60歳や70歳でもなかなか老眼を認めようとしません。しかし目は40歳半ばくらいで完全に老眼になっているんです。
自分の老眼を認めたくないあまり、だましだまし過ごしていると疲れますし、目の使い方は自律神経にもかかわってきますので、さまざまな体の不調につながることも少なくありません。年齢相応の老眼対策をしていくことが大切で、上手に付き合えば快適に過ごせます。併せて、症状が出るのを多少遅らせることが期待できる方法についてもご紹介します。
早い時期から遠近両用の眼鏡やコンタクトレンズを使用する
老眼が進んでしまってから遠近両用の眼鏡やコンタクトレンズを使おうとすると、視界が歪んで見えたり、ピントが合いにくかったりと、なかなかうまく使えないことが多いんです。ですから、それよりも前、理想的には40歳前で使い始めた方がいいと思っています。
私のところにいらっしゃる患者さんで、パソコンなど、手元の作業が多い人には35歳くらいで遠近両用のレンズを使ってもらっています。
私がこれまで患者さんを診てきた経験値ではありますが、老眼の症状を訴えて来院される方にいつから症状があるか聞くとほとんどが44歳6カ月くらいに当てはまるので、遅くてもそれまでには遠近両用の眼鏡やコンタクトレンズに慣れておいた方がいいでしょう。
自転車は、子どものときに乗り方を覚えてしまえば、必要になったときいつでも乗れますよね?それと同じで、眼鏡もコンタクトレンズもひとつの道具ですから、使う技量を身につけないと快適に使えません。まだ必要がないと思っている時期が慣れるためのいいチャンスなのではないでしょうか。

10分に1回、目のストレッチを行う
スマホやパソコンの画面を見たままピントをずっと動かさないでいると、目のピント調節機能が働かないので、意識的にピントを動かす目のストレッチを行いましょう。これは「スマホ老眼」にも有効で、裸眼でも、眼鏡やコンタクトレンズを使用した状態でも行えます。
具体的には、視線を手元からギリギリピントが合う遠い位置まで動かし、遠い位置でピントが合ったら視線を手元に戻します。これを10分に1回くらい、1秒~2秒でいいので意識的に行ってください。そうすると、ピントを合わせるために毛様体筋・水晶体が動き、毛様体筋の中の血管も伸び縮みします。これで血液の循環が良くなり、疲れがたまりにくくなります。
水平ではなく上(天井)を見るのもいいでしょう。上を見るときには首が伸びますよね。こうすることで首にある頸部交感神経叢(そう)という部分が伸びて交感神経を刺激するんです。近くを見ているときは副交感神経が働くことは前回の記事(10代でも老眼になる?意外と知られていない老眼の症状と仕組みに迫る!)でも説明しましたが、上を見ることで交感神経が刺激されるので、これもおすすめです。
アスタキサンチン、ルテインを含んだ食材を摂取する

活性酸素を取り除くような作用のあるもの、例えばアスタキサンチンやルテインは、疲れを取る効果があり、多少は老眼の発症を遅らせることも期待できるでしょう。
アスタキサンチンを含んでいる食材としては鮭、イクラ、エビ、カニなど。これらの赤い色素がアスタキサンチンです。ルテインを含んでいる代表的な食材はほうれん草やブロッコリー、かぼちゃ、にんじんなどです。食事で摂取するのが難しい場合はサプリメントも活用してアスタキサンチンやルテインを補ってもよいでしょう。
寝る前に軽い運動をする
手元を見ているときは副交感神経が働いている状態なので、そのまま寝ようとすると寝つきが悪くなってしまいます。そして寝不足だと副交感神経と交感神経が上手く切り替わってくれないことで目のピント合わせがうまくいかなくなり、悪循環です。
寝る前にスマホなどを見て目を使って疲れたら、1度体を動かして、交感神経を刺激してから床に就くと寝つきがよくなります。運動といっても軽いもので構いません。ストレッチでも足踏みでもいいです。目のストレッチとあわせて取り入れてみてください。
目の疲れを取る目薬を点す
ピント調節をスムーズにしてくれる効果があるネオスチグミンメチル硫酸塩の入っている目薬は、目の疲れを取る効果は期待できるでしょう。ただ、目薬をたくさん点せばいいというものではありませんので、用法用量を守って使ってくださいね。

THE老眼鏡はもう古い?遠近両用レンズの進化
老眼の対策としては、遠近両用の眼鏡やコンタクトレンズの活用をおすすめしています。遠近両用の眼鏡やコンタクトレンズの場合は合わないときにも簡単に取り換えができるので、取り入れやすいでしょう。そして、遠近両用の眼鏡もコンタクトレンズもすごく進化しています。
遠近両用眼鏡というと、レンズの真ん中にすじが入っているものを思い浮かべる人も多いかもしれませ。ですが、いまはそういうレンズを探すほうが難しく、30代でも抵抗なくかけられる見た目・デザインのものもたくさんあります。
それから、老眼の代表的なイメージとして、眼鏡をいくつも使い分けなければいけないというものもありますね。これも、いまはレンズが進化したおかげでほとんどの場合1つの眼鏡で対応できます。私も4~5年くらい前までは1日のうちでパソコン作業・診療・読書、車の運転と4つくらいの眼鏡を使い分けていましたが、いまのレンズにしてからは1つで済んでいます。
これからも遠近両用の眼鏡やコンタクトレンズはどんどん進化していくはずですので、新しい情報を手に入れていくことが求められるのではないでしょうか。近視・老眼と上手に付き合いながら人生100年時代を存分に楽しみましょう。
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